特定社労士の比嘉です
先日お客様から相談があった出来事です。
社会人未経験、新卒を採用しました。知人からの紹介もあり、社長曰く「立派な社会人にするぞ!」。
4月の入社初日から遅刻しました。理由を聞いてみると「お母さんが起こしてくれなかった」とのこと。「今の若い子はℤ世代というし、これからしっかり指導しなければ」と心に誓ったそうですが、日常業務に忙殺されていることもあり、注意指導まで手が回らなかったそうです。その後も早退(理由:猫のエサが切れそうで心配)欠勤を繰り返しましたが、給与から控除しませんでした。社会人になり立てで、税金も高いし、手取を減らすと可哀そうとの親心からです。
5月も勤務態度は変わらず、遅刻、早退、欠勤がありましたが、欠勤控除しませんでした。親心2回目発動。
6月、勤務態度変わらず。怒った社長は翌月10日の給与日に、欠勤を控除した明細を手交しました。入社から6カ月経過していないので、年次有給休暇はまだ発生していません。控除額は2万円弱となりました。
明細を受け取った新入社員は、その直後、無断外出したそうです。行先は所轄労働基準監督署。その後、監督官から調査に行きたいとの連絡がありました。日程を調整し、いざ現地調査(私も立ち合いを依頼されました)。
現地調査では、雇用契約書、就業規則を確認されました。契約書の賃金項目を確認すると「月給制:基本給〇円」との記載があります。就業規則には欠勤などすると給与を控除する旨の記載があります。
監督官曰く、「入社時の説明と、実態を確認すると、完全月給制となっているので、控除した給与を返してください。帰さない場合全額払いの原則に違反します」とのこと。会社としては、社会人1年目で、これから常識を学んでほしいとの親心から大目に見ていただけで、このような甘えは許されないと主張しましたが、契約が完全月給であると取り付く島がありませんでした。
給与規程には欠勤控除の記載もありましたが、控除を複数月行っていない現状もあり、就業規則の基準を上回る個別契約とされました。
ルールに則った運用をしていかなければ思わぬ事態を引き起こすことを痛感した事件でした。